ああ、そうか、こういうコートを着るときは、照れたりしないで存分にその気分に浸ればいいのね。だから、私たちに手を振ってくれた赤毛の彼女を思い出しながら黒革の手袋とブーツも合わせた。完璧なまでにマントを着てみる。これで街を歩けばそれだけで自分のなかにドラマが生まれそう。なんちゃって、でしょうか。でも、恐ろしいことに、このマントをはおっただけで私の立ち居振る舞いが変わった。指の先まで神経が行き届いたような動きがなぜかできるのだ。ただ一枚の布をまとっただけなのに。やっぱりコートはドラマを仕掛ける魔力を持っている。そしてもう一枚。ヒューゴ・ボス。最近女性ものを手掛けるようになったブランドだが、そこのコートを選んだ。ヒューゴ・ボスは私には実は馴染みが深い。なんといったって長らく男もののジャケットを愛用してきているのだ。過去の写真を見るとヒューゴ・ボスのだぶだぶジャケットを着た自分がけっこう愛らしい。肩も合っていないし、そうとう無理のある着こなしなのだが、ヒューゴ・ボスを着たいという信念と理想にとりつかれていた時代だった。
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